税理士試験の住民税に合格する勉強方法

この記事では、昨年、私が合格した住民税試験について、実際に行ってきた勉強方法を具体的に掲載していきたいと思います。(なお、合格年度は令和元年度、 第69回税理士試験 )

※注意…この記事に記載されていることは、個人的に実践した勉強法であり、合格を保証するものではございません。損害賠償などについては負いかねますのでご注意ください。また、最短かつ効率的に学習するための手法ですので、予備校で学ぶ範囲のうち、一部を学習せずに効率化を図っていることもご理解くださいます様お願い致します。

【住民税試験の特徴】

住民税試験には以下の様な特徴があります。

①住民税試験は大きく分けると、個人と法人の2分野があり、過去の本試験では9割以上が、個人分野しか出題されていない。(計算で法人分野出たことあるのかな?レベル)

②計算について、個人住民税は所得税の計算を基礎として計算されることから、所得税法を既に学習されている方には比較的容易に計算範囲の学習できる。

③しかし、計算自体は難しくないので、未経験者でも十分戦える。(なお、私は、所得税法未学習者です。)ただし、本試験では、高得点の争いとなる。

④理論について、理論の範囲が少なく、また、応用的な出題が他の科目(法人税など)に比べて未だ少ない。

⑤他の税法科目に比べて受験する人が圧倒的に少なく、受験者の年齢層が高い。

⑥税法科目の中では比較的合格率が高い。

(第69回…19%←これは異常、第68回…13.5%、第67回…14.3%、第66回…11.7%)

⑦テキストに係る費用が他の税法科目に比べて安い。

O社資料通信(テキスト+模擬試験)…¥55,600-

T社 資料通信(テキスト+模擬試験) … ¥75,000-

【住民税試験を選択した理由】

私が、住民税試験を選択した理由は以下の通りです。

①私自身が、所得税法・住民税法といった個人所得の計算について学習してきたことがなかったため。(自分自身の確定申告はしてきましたが…)

参考までに、自分のこれまでの経験及び学習済み科目を以下に書いておきます。

・法人税法、相続税法は学生時代に一度学習済み。

・社会人になってから上場企業(売上5,000億円以上)の法人税申告、消費税申告、事業税申告(外形標準課税適用)、固定資産税申告(償却資産税含む)、事業所税、関税、印紙税などの実務(税務調査含む)については経験済み。

②学生時代の友人が住民税法に合格しており、合格する秘訣を教えてもらっていたから。(これについては、下記に記載します。)

③学習範囲が国税三法に比べて少なく、数年かければ社会人でも合格できるのではないかと考えたため。

④学習に係るコストが他の税法科目に比べて安価であったため。(私自身、初年度の学習はDVD通信を行いましたが、2年目以降はテキスト+答練のみの購入だけで済ませていました。)

【住民税試験合格に向けた作戦】

住民税試験に合格するために実践した内容は以下の通りです。

① 計算及び理論は個人住民税の範囲しかやらない。

(理由は、本試験では、個人住民税の分野が9割以上の確率で出題されるため。また自分は、社会人になってからの受験だったので、法人の範囲までやる時間 を確保することが難しかったため。ただし、理論では、たまに個人と法人との比較が出題されるので、過去に出たものについては法人の分野についても学習する)

②本試験の計算で満点をとる。また、そのために、大手予備校、O社とT社のテキストを上手く使い分ける。(具体的には以下に記載しています。)

③理論については、過去問として出た理論を最優先に覚える。(予備校が行う理論のランク予想や模擬試験に出題される範囲は完全に無視する。また、予備校の模擬試験で理論が書けなくても気にしない。これを気にするとストレスが溜まって、理論暗記のモチベーションが下がることとなる。大事なことは、いかに本番で理論を書けるようにするかである。そのため、私は、一度も予備校の模擬試験について提出せず、本番以外で自分がどの順位にいるか知りませんでしたし、興味もありませんでした。)

【 具体的な対策】

具体的な対策に入る前に、前置きではございますが、住民税試験では、計算と理論のどちらが重要だと思いますか?

私は、計算が重要であると考えます。

さらに言えば、合格の秘訣は、本試験の計算問題で満点をとるということです。

え?こいつ何言ってんの?って思うかもしれませんが、これは事実です。

では、なぜ満点を取ることが重要かというと、それは、住民税試験の受験者層と関係しています。

上記の住民税試験の特徴でも記載の通り、受験者数が少ないため、必然的に合格者数も少なくなってしまいます。

その為、受験者のレベルは、2回以上受験している人が多く、上位層のレベルが高止まりしているのです。(これに加えて、1年目の受験でも合格レベルまでもっていきやすいため、尚更レベルが高くなります)

この様な状況を打破する方法が、私の友人が合格した際に伝授してくれた秘訣となります。

私は、友人が住民税試験に合格した際に、「どうやったら合格するの?」とその秘訣を聞きました。そうすると、その友人は、こう答えたのです。

「本試験の計算で満点を取ること」

つづけて友人は、「試験後に仮採点したけど、本試験の計算の最終数値が、仮採点の解答と全て一致したから受かったんだと思う」といったのです。(もちろん、理論も書けるだけ書いて、8割は合ってるとも言っていました。)

これを聞いて私は、「住民税試験の攻略法はこれだ!」と思いました。

私はこう考えたのです。

①住民税試験では、計算で満点を取ることが可能な試験科目であるということ(他の科目の計算で満点取ることは、ほとんど無理に等しい)

②本試験の計算で満点が取れてしまえば、理論は最悪、35点取れれば受かるなと思ったこと(大体、O社・T社のいずれも仮採点の合格ラインが80点前半の為。ただし、ボーダーラインじゃないですのでご注意)

では、果たしてこんなことは可能なのでしょうか?この答えは、「可能です」

なぜなら、私自身、合格した年の計算は、仮採点で満点だったからです。

住民税試験では、計算満点という事が意外と多いようです。(特に69回試験においては、計算問題が非常に簡単で、合格祝賀会で合格された方々に確認したところ、ほとんどの方が「満点をとった」とおっしゃっていました。なかには、計算は、1~2問ミスし、理論が完璧だったと答えた人もいましたが、少数でした。)

計算編

さて、前置きが長くなりましたが、ここから、具体的な対策法を説明していきます。具体的な対策については、以下の通りです。

  • テキストを使い分ける(模擬試験含む)

 私はこれまでテキストについては、O社のものしか使ってきませんでした。

 しかし、ここに大きな落とし穴がありました。

 それは、計算スピードが上がらない計算用紙が足りない場合がでてきたということで す。

 そこで、この2点について、限界を感じたことから、思い切ってテキストをO社とT社の二刀流にしようと決断しました。

 その結果、計算スピードも上がり、かつ、計算用紙が足りないということは無くなりました。

 それは、なぜか? その答えは、O社とT社には、以下の様なメリット・デメリットがあ ったからです。(※個人的な感想であり、住民税試験に限りかもしれません)

【O社】 

(メリット)

・基礎的な理解を深めるためには非常に良い。説明が細かい。

・計算過程が省略されておらず分かりやすい。

・学習する順序がテキストの流れに身を任せれば大丈夫。

・応用編のテスト(実力判定公開模擬試験以降の問題)でも比較的簡単。

・コメントが必要な場合は練習問題のころから必ず記載されている。

(上記のコメントの重要性については、第69回税理士試験の住民税試験において合否を分ける重要なポイントとなった可能性がありますので、下記のリンク先にその内容を掲載しています。)

【コメントの重要性を記載した記事はこちら!】

(デメリット)

・応用の範囲がT社に比べて狭い。

・本試験においては、計算過程を省略しなければ計算用紙が足りなくなったり、時間が足りなくなることから、バカ真面目にO社の書き方をしたらエライ目にあう。

【T社】

(メリット)

計算過程が省略すべき点は省略されているので、計算時間の短縮及び計算用紙が足りなくなるということがなくなる。

・応用編のテストが難しく、また、O社では学習しない範囲も出題される。また、出題形式もO社とは異なる。

(デメリット)

・テキストの構成が分かりづらい。O社に比べて、初心者が学習しにくい。

・各項目の説明が少ない。

これらのメリット・デメリットから、私が実践したテキストの使い分けは以下の通りです。

①まず初めに、コストはかかるが、今回は必ず受かるという決意のもと、O社・T社両方のテキスト及び模擬試験の用意をする。(私自身、合格した年は両方のテキスト等を使用しましたが、不合格の年はO社のみのテキストを使用していました。)

②テキストが用意できたら、学習の流れとしては、まず初めに、O社のテキストや基礎問題集を使用して、住民税試験の基本的な計算構造を理解した上で、実力判定公開模擬試験を繰り返し解く。O社を先に解くことポイントです。それは、O社を先に解いた方が容易に理解が進むため)そして、実力判定公開模擬試験で、満点又は1問ミスのレベルになったら、今度は、T社のテキストや基礎問題集を一度全部解いてみる。

そうすると、O社とT社の解答方法の違いに気づくことができます。

特に、T社の計算過程の省略方法については、O社と比べて秀逸であり、実践的です。

その為、私は、計算構造はO社を使用し、計算過程の省略はT社を使用することで、時間の短縮に成功し、また、計算用紙が足りないということがなくなったのです。言葉だけだとわかりにくいので、別の記事で本試験の問題を例に挙げて、解説していますのでそちらを参考にしてください。そちらの記事は本当に重要ですので必ず見てください!)

【実例】2019年の税理士試験の住民税に合格した際の本試験の問題用紙の使い方と仮採点について

③次に、②の計算の練習と並行して、間違いノートを作ります。これは、財務諸表論の計算の勉強方法の際にも記事にしましたが、間違いノートを作る目的は、間違えた問題に対する解答方法の記憶の定着と、直前期に必要以上に計算に対し勉強時間を使わない(理論中心の学習を行う)という目的があります。(間違いノートの作り方の例は、別の記事で紹介していますのでご参照下さい。)

間違いノートの作り方はこちら⇒【計算間違いノート

ここまでくると、O社・T社いずれの模擬試験を解いても、必ず1時間前後で計算を解くことが出来る様になります。(私はなりました。早い人は恐らく1時間以内くらいだと思います。)

その結果、計算に対し自身がつき、直前期に理論の学習を中心に行うことができるのです。

理論編

理論の学習方法については、以下の通りとなります。

①O社の過去試験問題集を活用し、本試験で求められる解答がどのようなものかを理解する。その上で、覚えるべき理論を決める。

これは、どういうことかというと、私自身、合格する前の数年間は、理論の範囲を全部覚えれば合格できるだろうと考えていたのですが、それは大きな間違いであったということです。

言い換えれば、理論の範囲をすべて暗記し、網羅したとしてもアウトプットの方法を間違えると合格しないという事です。

要するに、試験委員が求める解答をしなければいけないということです。

しかしながら、私は、試験委員の求める解答を自分が暗記した理論の中から抜粋して解答 できるほど頭が良くありません。(これは断言できます)

また、求められる解答を自分だけの知識で構成することには、リスクを伴うことを理解しなければなりません。(見当違いな解答を作り上げても得点にならないし、暗記の時間がすべて無駄になるため)

そこで登場するのがO社の過去試験問題集です。

なぜ、T社ではなく、O社なのかというと、O社の過去試験問題集には、過去の理論問題に対して、理論テキストのどこを書けば正解かということが記載されているのです。

(上記に加えて、O社の過去試験問題集の良いところは、理論テキストには記載されていないにも関わらず、本試験で問われる趣旨意義についても記載されている点です。)

すなわち、試験委員の求める解答を自分で考えなくても、そこに書いてある理論を覚えて その通りに書けば、試験委員の求める解答を適切に書ける作りとなっているのです。

ただし、理論テキストのどこを書けば良いかは書いてありますが、覚えるべき部分は、理 論テキストにいちいち戻って確認しないといけないので面倒です。

そこで、私が行ったことは、自分専用の理論テキストを作り上げました。

(言葉だけではわかりにくいので、画像と共に、リンク先の記事で説明します。【住民税理論自作テキストの作り方はこちら】これも必ず見てください!)

あとは、自分で作り上げた理論テキストをひたすら暗記するだけで、インプットとアウト プットを同時に学習することができます。

(※この学習方法について、他の試験科目で通用するかは不明です。住民税試験の特徴でもあげましたが、住民税試験の理論は、過去に出題された形式がそのまま出ることも多々あり、法人税法などの試験の様に、応用形式での出題が未だほとんどないことから通用する勉強方法であることをご理解ください。)

②自分独自の理論暗記方法を確立させる。

 この点について、私が実践していたことを以下にいくつか紹介します。

ⅰスキマ時間や疲れている時にも勉強できる工夫をする。

(私は車通勤をしており、片道30分運転をします。その時間活用する為に、VOICEROID2という文章読み上げソフトを使って理論暗記を実践していました。メリットとしては、運転中の様な両手がふさがっている時でも音声により理論暗記ができるという点や、理論を回す際にただ聞き流すだけでも忘れることを防止できていたと思います。また、疲れているときにも、布団に入りながら聞き流すだけで、何もしないよりも確実に記憶の定着を手助けしてくれました。自分自身、耳から覚えることの方がどちらかというと得意なようで、皆さんも一度試してみると向き不向きもわかるかと思います。デメリットとしては、ソフトを購入するのに費用がかかるということと、一度はソフトに理論を手打ちする必要があり、慣れるまでは1個の理論に対し、1時間くらいかかるということです。私は、勉強のやる気が出ないときの夜中にひたすら打ち込んでました。)

Ⅱ理論暗記は、立ちながら又は歩きながら行う。

(理論暗記は、非常に眠くなります。そのため、できる限り集中力を維持し、眠気に負けないために立ちながら又は歩きながら行っておりました。発展形として、私は、朝6時から7時までの間、できるときはウォーキングを行いながら、録音した理論を暗唱していました。(はたから見たら、歩きながら独り言いってるヤバいやつですが…)これは、学生時代に官報合格した友人が実践していた方法で、また、記憶の定着について記憶力世界選手権のトップランカー達が実践している方法でもあります。普段の運動不足の解消と併せて行うようにしていました。)

Ⅲ仕事の昼休みにできる限り早く昼食をとり、理論を1問だけでも良いので暗唱する。

(記憶の忘却曲線を意識し、覚えたものを少しでも思い出すことで、記憶の定着を強固なものにするために実践していました。ただ、昼休みに勉強はキツイという方もいるかと思います。そんな時は録音した理論を活用するとよいでしょう。)

③自分に負けない

税理士試験は、他人との競争試験であると共に、何よりも自分に負けないことが大切です。また、理論暗記は、非常につらい作業です。しかし、合格する人は皆この苦行を乗り越えられた人だけです。自分に負けていては、絶対に他人には勝てません。また、本試験では、自分の精神状態すらもコントロールしなければならず、本番で力を発揮できなければ、どれだけ勉強してきても何の意味もありません。本番で力を発揮するためには、理論暗記のときや計算問題を解くときから常に本番を意識し、間違えないための工夫を自分なりに考えなければいけません。自分に負けないためには、本当の最終目標を見失わないことが大切だと思います。

私は、高校3年生の時に、誰から言われるわけでもなく、自ら決めた夢が税理士でした。

今では、1児(当時5才)の父親であり、子供に夢を語るには、自らが決めた夢を実現する必要がありました。

自分にも他人にも負けられない状況を作ることで、辛い理論暗記にも負けずに立ち向かえたと思います。

終わりに

住民税試験の合格体験記について長々と書かせていただきました。

私自身、税法科目の合格方法が全然分からず、長い間もがいていました。

その中で見つけ出した合格方法を共有することで、同様に苦しんでいる方の手助けになれば幸いです。(必ず役に立つ保証はありませんが…)

もし分からないことがあればコメントくださいますようお願いいたします。

答えられる範囲で対応したいと思います。

皆様の夢が叶いますように願っております。